黄表紙を読む【奇事中洲話】 山東京伝 前半

奇事中洲話 山東京伝作 北尾政美(鍬形掲載)画 寛政元年発行

(※赤丸 蔦屋の印)

寛政元年に発行されたということは、それ以前に書かれたということ

つまりは天明年間に執筆されている、

いわゆる 寛政の改革が始まるのであります

天明年間は巷では天候不順による不作のため飢餓 浅間山噴火 打ちこわし 田沼政治が行き詰まり 松平定信が台頭してくる そして狂歌が爆発的ブームとなります。(趣味教養豊かな武士や町人の間でブームとなったというけれど、世の中不安定な状況だったはず)

お話の中身はそれほど難しくもなく、楽しい内容なのですが、一髪触発 ラインギリギリのお話の出版だと思われます。

時代背景を考えると、なんとも これはまずいのでは?ウーーーーンチョットチョト という作品なのであります

ただいま 田沼政治の中蝦夷地開発について調べてます 
田沼意次はいわゆる 賄賂政治とのイメージが強いですが、財政難を乗り越えるために様々な執政をしていました、蝦夷地開発も必要に迫られて探索だったようです。

文中にもやわら登場する土山宗次郎 天明六年(1786)2月と6月に幕府勘定組頭の土山宗次郎が、江戸室町二丁目の飛脚 問屋十七屋孫兵衛に越後米と仙台米を不当に買い付けさせ、その差額を横領したとされる。土 山は断罪され、十七屋も手代が処刑され、店が闕所(家財没収)となりました。

天候不順による不作のための飢餓 そのためのお救い米が、この不正買付された模様

この作品の時代背景は実に色々ありすぎるのです

こんな時代だから、黄表紙や狂歌で笑い飛ばそうと画策する蔦屋重三郎なのでしょうか???

趣味教養豊かな武士や町人の間で流行した黄表紙や狂歌本を出版して成功を収めていく蔦屋重三郎、まさに機を見るに敏な男であったのだろうと思います

あらすじパート1(数字は見開きのページを便宜上つけています)

【1】近松門左衛門「冥途の飛脚」から  遊女屋で遊ぶ忠兵衛と梅川 隣座敷に八右衛門がいる

着物の紋や座敷のしつらえに梅川と感じさせる工夫 貸本屋借りた本を読んでいる人たちが話をする形になっている。

【2】

定飛脚問屋「亀屋忠兵衛」。実は十七屋孫兵衛も関わった越後米・仙台米の不正買い上げ事件に擬
している。店に踏み込む捕り手の右横に米俵

左の壁に「折れ釘」がついているので 蔵

歌舞伎仕立てに取り物の場面 不正買付をあらわしている???

【3】忠兵衛と梅川の道行場面

【4】場面変わって 閻魔様登場 地獄の閻魔様 おいぼれてきたので、2代目の閻魔様を迎える この2代目蔵前から呼び寄せたので、色々洒落やら地口やらやたらに賑やか
そこへ、昔の知り合いらしき女が閻魔様を尋ねてくる 私娼窟だった中洲も吉原の火災で遊女たちが中洲に仮宅を設けたことで地獄が極楽になったと地獄へ来た理由を述べる

【5】閻魔様は相変わら洒落や地口 地獄にやってきた昔の女にゾッコン
場面変わり 三浦の高尾(仙台高尾が有名)荻野八重桐(女形役者)が地獄で夫婦になっていた。高尾は閻魔様の妾 八重桐は小姓を勤めていたが、地獄にやってきた女が閻魔様の寵愛を受けたので、高尾八重桐夫婦は娑婆に行くことにする

洒落を言いまくる閻魔様

【6】娑婆では、飛脚屋忠兵衛と梅川が 八右衛門の策略(兵衛の紙入れの印判を盗んで証文を偽造し、忠兵衛出入りの御屋敷役人から用米金4万両をだまし取る)にかかり、大阪にいられなくなり江戸へ出る。新宿に落ち着き、梅川は吉原の三文字屋七兵衛へ「花袖」の名で奉公に出る。

この三文字屋七兵衛は 大文字一兵衛 狂歌名「加保茶元成」

最後 何気ない 馬子と男の会話
馬子「ドウドウ 畜生め あんたるこった 暴れ出しぁがる」
馬上の男「どうぞ、青梅まで行かれれば良いが」

注釈 土山が出奔した際、東作の援助で山口観音(現所沢市)に身を隠したことを暗示する 馬の腹帯の紋は土山のもの

今回の勉強会はここまで 来月 「奇事中洲話」ラストまで読み切ります。



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