傾城買四十八手 山東京伝

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傾城買四十八手 山東京伝 洒落本

吉原の隅から隅まで知っている山東京伝の描く遊女の世界

「遊子方言」から始まる、洒落本の世界、「息子」(うぶな息子)「半可通(痛を気取るもの)」を中心に遊女と客の駆け引きを描写、野暮な客を笑う。

傾城買四十八手あたりから、洒落本 上記の「息子」と「半可通」と遊女のやり取りから、だんだん遊女や客との心情的な人間描写が多くなり、人情本への移行となっていくらしい。

寛政の三部作(「青楼昼之世界錦之裏(せいろうひるのせかいにしきのうら)」「娼妓絹篩(しょうぎきぬぶるい)」「仕懸文庫(しかけぶんこ)」)が、内容面で、従来の洒落本の持つ傍観性・遊戯性を薄め、男女の実意・真情を描くという洒落本解体の方向を示したことは既に言い古されたことだが、今また、かかる続編執筆の企てを見た時やはり洒落本から人情本げの橋渡しは、京伝の手で、それも寛政2年のこの書(傾城買四十八手)あたりから始まったと見る劇であろうか???

日本古典文学全集 洒落本滑稽本人情本 小学館 洒落本解説 中野三敏先生

手とは

「手」とは、遊女の歓心を買い、楽しく遊ぶため
のさまざまな手練手管のことを言うが、その中核となるのはことばづかいである。
ありていに言えば口説き文句である。客にとって「手」を駆使していかに遊女の
愛情を獲得していくかが廓遊びのおもしろさにつながる

https://repository.musashi.ac.jp/dspace/bitstream/11149/1576/1/jinbun2012no44_04_003.pdf

しっぽりとした手
やすい手
見ぬかれた手
しん(真)の手

4つの【手】のお話

しっぽリとした手

遊女昼三 16歳この春から初めて遊女として店に出る。
客ムスコ 18位 人柄よく良い身なりあまり口もきかない。

客も遊女も初心ゆえ手管らしき手管もなく、かえってしんみりと情が通い合う様を描く(脚注より)

やすい手

客 山手の通 22,3歳
遊女 小見世の座敷持ち よほど年増 馴染みの二人

遊びにもすっかり年季が入り、互いにやたら悪口の言い合いをしながら、結構気心は知れているような遊びを描く(脚注)

見ぬかれた手

客 家中のもの(大名の家来)22,3歳 でくでくと太っている
遊女 部屋ざしき(昼三と部屋持の間くらいの女郎)二十歳くらい
見世 大見世

野暮な武士客の魂胆をすっかり見抜いた女郎がその上手を行ってあやつる様を描く(脚注)
女郎に名代の客があり、すっかり放って置かれた客は「帰る 帰る」と駄々をこねる。女郎にとっては、慣れたもの、頭では金の計算をしながら、男を丸め込む。

真(しん)の手

大見世
遊女 22,3歳昼三 女房にもなろうとしている
客  33,4歳  少し苦味はしって、嫌味のない色男

互いに遊びを離れて、真実惚れあった者同士の真情を描いている(脚注)
居続けの座敷 見受けする金の算段もできないのに、今まで遊び慣れた習慣で芸者や太鼓持ちを呼んで遊ぶ。芸者太鼓持ちも二人を心配している様子。二人になると金の話、暗い話ばかりとなる。茶屋・やり手や同胞にも意見されるも、聞く耳を持たず、段々と二人の世界に入り込む。

「傾城に真があって運のつき」(傾城に真実なしというが、真実のある傾城に係りあえば、かえって命取りになる)
こうなると、お互いの中に見栄はなくなり、文も悪紙に用件だけ書き送り、この客の好きなものを好きになり、その男の癖までうつる。他の客をとらなくなり、ついには一人になる。人ばかり恨み、面白くなくなる。
遊女は客を帰した翌る日はふさいで飯も食わず、張り店にも出ない。
客は家に帰ると家にある阿弥陀様まで遊女に見えてくる。

この二人の行く末はどうなるのやら・・・

前出のように、「真の手」の話になると、人情本と言っても良いくらいの内容になってくる。

寛政2年作 寛政の改革がじわりじわりと始まっている。版元は蔦屋重三郎であるはずだが、蔦重の名前は出していない。山東京伝はこれから三部作を発表するのだが、これで手鎖50日となる、蔦重も財産の半分を没収される。

2回に分けてのリモート勉強会 なんだか遊女のお話はお腹いっぱいになってきた。
でも、このような戯作をたくさん読めば読むほど、遊女の真情や遊びにまつわるさまざまなことがわかるようになるのだろうと思う。
三人のおばさまたちが、このような場面を音読しながら話し合うのは、側から見たら滑稽だろうな〜と思う。

次回 山東京伝 「繁千話(しげしげちわ)」を2回に分けて、音読して、2021年いっぱいで、洒落本はおしまいになる予定です。



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